声明:新たな闘いへの出発(安倍元首相の『国葬』に反対する実行委員会の解散に際して)


9月27日、世論の圧倒的多数が反対する中、岸田文雄政権のごり押しで「安倍元首相国葬」が日本武道館を会場に強行された。

岸田政権は自らの政治的思惑で国葬開催を閣議決定のみで強行した。日本武道館で開催されたその国葬は4000余人が出席したが、「君が代」の演奏に始まって、黙とう時には戦前の軍歌「国の鎮め」が演奏され、その後「悠遠なる皇御国」という天皇制礼賛の曲目が自衛隊音楽隊によって演奏されるというおどろおどろしい演出がされた。

特記すべきことは、この国葬には自衛隊員千数百人が参加し、遺骨が自宅を出発する際には自衛隊員による儀仗が行われ、遺骨を乗せた車は国会議事堂ではなく、わざわざ防衛省に立ち寄った。遺骨が会場に到着すると自衛隊員による「弔砲」が発射された。会場付近の沿道に自衛隊員が整列する「と列」や音楽隊の演奏も行われ、自衛隊が特別に突出したイベントとなった。日本国憲法下での行事で戦前の天皇制軍国主義の復活を思わせるかのような異様な光景が展開されたことは黙過できない。

国葬をもって安倍氏の「政治的業績」を賛美し、それを人々に押し付けようとする企ては許されない。安倍氏はその在任期間において、極右カルト集団・統一協会と結託し、日本国憲法を敵視し、家父長制思想を復活させて女性政策を後退させ、教育基本法や安保関連法制の改悪など行政を歪め、権力を私物化し、歴史修正主義、民主主義破壊、軍拡、解釈改憲、その他数多くの憲法違反の悪法を強行成立させてきた戦後最悪ともいうべき首相だった。

安倍元首相が亡くなったことによって、彼のこれまでの数々の悪政の責任が消えるわけではない。

この日、安倍国葬に反対する市民は東京の国会正門前で15,000人のデモを開催したのをはじめ、現在までに集約できただけでも全国47都道府県の津々浦々、250箇所以上の地域で、3万人を超える人々が国葬反対の行動を展開した。

私たちは7月22日の閣議決定に反対する首相官邸前行動を皮切りに、首都圏を中心に85の市民団体が結集して「安倍元首相の『国葬』に反対する実行委員会」結成して、8月31日の国会正門前行動(4000人)、9月19日の代々木公園での集会とデモ(13,000人)をはじめ、連続的に街中でさまざまな行動を展開した。同時に全国各地の市民は各自治体で、半旗の掲揚や黙とうの強制など、公的機関での追悼を強制させないための要請行動をした。また岸田政権が「弔問外交」を企図したことに対抗して、憲法学者を中心に国内のほとんどの外国公館などへ声明を送付し、実行委員会も外国特派員協会での記者会見を開催した。また国葬反対のネット署名運動を展開し、40万筆以上の署名を集めた。27日の国会前の集会で、在日ミャンマー人の労働者の団体と、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の代表も発言したことは、この行動が国民的な枠を超えて、広く国際的市民と連携して取り組まれたことを象徴するものだったと言える。

今回の行動は実に多様に、広く、深く展開された。

運動のこのような盛り上がりに恐怖した国葬推進派は、三重県の自民党県議が「国葬反対のSNS発信の8割が『隣の大陸』からだったという分析が出ている」などとツイッターにデマを投稿し、情報の出所を追及されると、自民党の高市早苗経済安保担当相の講演だと説明し、のちに高市氏が否定する騒ぎとなった。高市氏の責任は免れない。同様のことはSNSの世界では、国会正門前の集会は数百人に過ぎないと「日本野鳥の会」や警察が発表したとデマ情報を流し、同会や警察当局に否定される騒ぎもあった。

これに並行して岸田内閣の支持率も続落し、時事通信が10月7~10日に行った世論調査では内閣支持率が「政権維持の危険水域」とされる20%台の27・4%となり、不支持率が43%となった。とりわけ統一協会と自民党の癒着をめぐる岸田内閣の対応には67・6%が「評価しない」とした、

岸田政権の支持率が大きく低下したことは、参院選後、3年は大規模な国政選挙が予定されないことから、岸田政権にとって改憲や防衛力(軍事力)強化にとって絶好の「黄金の3年」といわれたこともどこへやら、政権維持そのものすら危うくなってきたことを意味する。岸田政権による安倍国葬の企ては失敗した。

私たちの実行委員会は出発時の確認通り、10月11日をもって、いったん解散する。

しかし、それは岸田政権とのたたかいの終焉をまったく意味しない。この実行委員会は様々な運動の経過や立場の違いを超えて、お互いの行動を尊重し、共同してきた。

今後、わたしたちは新たに体制を整えて、引き続き自民党と統一協会の癒着追及の闘いを継続する。そして自民党など歴代政権の悪政を追及し、反戦・平和、反改憲・反軍拡・いのちと暮らしを守る闘いを堅持し、岸田政権を打倒し、真に民主主義を実現する新しい政治をもとめてたたかい続ける。

2022年10月11日
安倍元首相の「国葬」に反対する実行委員会