日本学術会議会員の任命拒否を撤回し、6名のすみやかな任命を求める(アピール)
2020年10月6日
戦争させない9条壊すな!総がかり行動実行委員会
日本学術会議総会が推薦した新会員105名の内の6名が、菅首相によって任命を拒否されました。これに対し、日本学術会議は菅義偉首相に、理由の説明と新会員候補6名の任命を求める要望書を送付するというこれまでにない対応を行いました。
菅首相は「法律に基づき任命した」と強弁し、加藤官房長官は「会員人事で一定の監督権行使は法律上可能」と従来の政府見解と異なる説明を行い、政府の担当部署も「義務的に任命しなければならないというものではない」と開き直るという許しがたい対応です。
多くの市民、学者、学生が抗議の声を上げています。「菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求めます」とのネット署名は5日時点で10万人をこえて賛同が寄せられ、「#日本学術会議への人事介入に抗議する」とのツイッターは短時間で20万件以上に広がるなど、抗議の声は急速に高まっています。
任命を拒否されたのは芦名定道京都大学教授、宇野重視東京大学教授、岡田正則早稲田大学教授、小沢隆一東京慈恵会医科大学教授、加藤陽子東京大学大学院教授、松宮孝明立命館大学大学院教授の6名で、多くの方が安保法制・戦争法、特定秘密保護法、「共謀罪」などの違憲法制や辺野古新基地建設に反対する見解を表明されました。
学問的、専門的な見地からの政府方針の批判が今回の任命拒否の理由だとすれば、それは憲法第23条に規定される学問の自由への国家による露骨な侵害にほかなりません。
日本学術会議は1949年1月、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献することなどを使命として設置された「政府から独立して職務を行う『特別の機関』」です。独立性を担保する目的で、会員210名の任命は「(日本学術会議による)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」(日本学術会議法第7条2項)とされ、仮に会員に不適当な行為があっても学術会議の申し出がない限り退職させることができない(同法第26条)など、首相の人事裁量の入り込む余地を排除しています。戦前の学問、言論への公権力の介入が軍国主義と戦争への道を開いたことへの痛切な反省があるからです。
日本学術会議もその立場を堅持しつづけ、2017年度に軍事応用できる基礎研究への防衛省の助成制度の増額が行われた際、「再び学術と軍事が接近しつつある」と危機感を示し「戦争を目的とする科学の研究は絶対に行わない」と表明しました。
日本学術会議法改正によって会員の公選制が内閣総理大臣の任命制に改変されたのは1983年ですが、その際にも日本学術会議の独立性が問題となり、政府は「学会の方から推薦していただいたものは拒否しない」と国会答弁しています。
今回の任命拒否は、従来の政府見解にも反する解釈変更を内閣が独断でおこなったことも大きな問題です。安倍政権では、集団的自衛権行使容認の閣議決定という解釈改憲や、東京高検検事長の定年延長にかかわっての検察官への国家公務員法適用での解釈変更がおこなわれ、法のルールを捻じ曲げる事態が続いていきました。
安倍政権の下で、人事権を恣意的に乱用して官僚などに政権への隷従を迫る手法の中心にいた菅首相が、日本学術会議にも同様の手法で隷従、忖度を迫ったのが今回の任命拒否であることは明らかです。
このようなことが繰り返されることでは、法治国家の根本が揺らぎます。立憲主義や民主主義が根元から腐り、空洞化し、広く市民の人権を脅かすことが懸念されます。
総がかり行動実行委員会は、菅首相に対し、6名の会員任命拒否の経過と理由を説明し、速やかに任命するよう強く求めます。
民主主義のこれ以上の後退を許さず、物言えぬ社会を拒否するには、立憲主義を守る政治に転換するしかありません。自公政治に代わる政権の実現にむけた全国での取り組みの強化を心からよびかけます。
以 上