「五輪よりいのちが大切」、この立場での政府など関係者の対応を求める(アピール)


7月23日に東京オリンピックの開会式が行われた。一月前のマスコミの世論調査(朝日新聞6月26日、27日)でも、今夏のオリンピック開催の中止、再延期を60%が求め、開会式前日の7月22日には東京都の新型コロナウィルス感染者が1979人に達し、「感染の第5波」の到来を専門家が指摘する中での開会式であった。

東京都及び首都圏のコロナ感染者数の急拡大は続いており、7月21日に開かれた東京都のモニタリング会議は8月上旬の新規感染者数は週平均で約2600人との予測を示す事態である。

この事態に至っても、東京都の小池百合子知事は、「東京五輪を中止する選択肢はない」と述べ、菅義偉首相は「五輪やめるのは簡単、楽なこと。挑戦するのが役割」とマスコミへのインタビューに答えている。開催が自己目的化され、何のため、誰のための五輪開催なのかという根本問題は脇に追いやられ、国内外の市民のいのちを危険にさらすリスクが強まるもとで続けられている。

世論に押され、開会式も多くの競技会場も無観客となったが、主催するIOC(国際オリンピック委員会)は有観客での開催圧力をかけ続けているとも報じられる。

世論や専門家の指摘、コロナ感染拡大の現実に目をつむり、商業主義に陥ったIOCの圧力と、自らの政治的思惑で五輪を強行し続けているのが菅内閣、小池都政であり、その姿勢は「いのち大切」の立場から逸脱している。この姿勢では、「安全・安心」の五輪の実現は期待できず、長期間にわたりコロナ感染症と苦闘している医療現場にさらなる過重負担をおいかぶせるだけである。

7月25日に会談した菅首相と小池都知事は、東京五輪は「非常にスムーズにいっている」との認識で一致したとも報じられる。首都圏での感染拡大に加え、五輪関係者のなかでもコロナ感染者は既に130人をこえ(7月25日時点)、競技参加を断念した選手や競技終了後に陽性反応を示した選手も出ている。感染対策での「バブル方式」の破たんは明白であり、「スムーズ」な運営とは到底言えない。

不都合な事実には目をつむり、必要な対策さえとらないままでは、五輪が世界にウィルスを拡散させる契機となりかねない。仮に、東京五輪を契機にコロナパンデミックが拡大しても、その責任を負う者が明らかではないという無責任な状況で開催されていることも重大問題である。

この間の菅内閣のコロナ感染対策は、補償のない自粛の強制と感染防止の責任を個人の行動形態に丸投げし、ワクチン接種頼みの対応に終始してきた。その施策の失敗が明らかになると、飲食店をターゲットに法的根拠もなく金融機関などを「自粛警察の手先」とするような強権的な対応さえ行おうとした。その姿勢の延長線で今、菅首相などが憲法への緊事態条項の創設をはじめとする改憲姿勢を強めていることを見過ごすことはできない。

また、コロナ感染対策での審議を求めて野党が提出した臨時国会開催要求を無視し、爆発的なコロナ感染拡大が懸念される事態への対応の論議さえ行わない菅政権の反立憲主義、独善的な姿勢も許されるものではない。

全国で急拡大しているコロナ感染の状況も、「バブル方式」破たん状況も、政府、東京都などの緊急な対応が求められる事態にある。その認識から、五輪中止の選択肢を排除することなく、オリンピック関係者が事実と科学的知見に基づく検討を行うこと、国会を開催してすべての情報を開示し、国民的合意をつくりだす審議を速やかに行うことを強く求める。

2021年7月27日
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会